わたくしはもともとは建築屋上がりで不動産も始めた輩でありまして、就職してからこの方約15年間は建築に携わってきました。
その間、やはり不動産業に対するあこがれといいますか、必要性を感じ始め、いつかは不動産にも関わりたいといった思いはありました。
私、こうみえても実は自分の思いを実現させてきています。
不動産業ってその当時は、物件を紹介して買いたい人にはい!引き渡し、で終了で、報酬頂き!なんて軽く思っていましたが、やはり見えないところで大変でした。
しかも、不動産屋に努めたこともないため、要領がつかめず、マニュアル通りに行うしかありません。
まー安全に取引を行い、お客様には安心して購入していただくにはこの位行わないとならないのは重々承知いたしました。
という訳で、どういった事を行っているのか、みなさんが見えていない作業をおしえちゃいます。ちなみに不動産仲介の事です。
不動産仲介の大まかな仕事の流れ
1. 受 付
2. 調 査
3. 価格査定
4. 媒介契約
5. 不動産広告
6. 現地案内
7. 資金計画
8. 条件交渉
9. 重要事項説明
10. 売買契約
11. 決済・引き渡し
12. アフターフォロー・税務、法務相談
1.受 付
ここでいきなり重要な項目です、ここで顧客のニーズをより具体的に把握しておかないと、後で思い違いでしたでは、残念なことになりかねません。
誰が(Who)、いつ(When)、どこで(Where)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)・・・5W1H
これをお伺いする事が後の取引をスムーズにさせます。
2. 調 査
ここが、不動産屋を初めて、一般の人には見えずらくて、理解されにくい仕事だと気がつきました。
一般の方同士の取引では、ここの部分はほとんど行っていないのではないかと思います。
逆を言うと、安全な取引を行うには、ここがプロとしての腕の見せ所という事に気がつきました。
また、後の重要事項説明書や売買契約に繁栄される内容の殆どをここで把握いたします。
調査の業務でも様々な種類がございます。
ア.公募等による調査
イ.面接聞き取り調査及び現地調査
ウ.生活関連施設調査
エ.法令上の制限調査
ア.公募等による調査
ここでの調査は「位置の確認」「権利関係」「事実関係」の確認です。
まず当該不動産の「位置確認」です。
特に所有の土地が一筆とは限りません、なんらかの都合で分筆して数筆所有している可能性があります。
隣の土地まで所有が及んでいたという事があるためしっかり周辺の状況まで登記情報を確認します。
次に「権利関係」「事実関係」の確認です。住所の位置と申しこんできた人と所有者が合っているか登記情報で確認します。
ここで、例えば親の名義のままのケースがあります。そういった場合はまず、相続確定していただく作業をおこないます。
(ここでいきなり売りに出すまでにつまづきます)
銀行のローンや事業を行っていた方は“抵当権や根抵当権”がついたままになっているケースもありますので、ローンが終了している場合は外してもらう作業をしていただきます。
次に所有者本人の身分関係、行為能力の確認も行います。所有者本人が認知症で意思の疎通ができないとなると、そもそもその物件を売ることができないからです。→その方が成年後見人がいる場合は成年後見人の身元を確定します。
本当にそんな制度を利用されている方がいるのかと疑問でしたが、私は初めて接触することができました。お話を聞く機会がありましたので、その事については別の機会にあげます。
公募調査はだけでも、もっと細かく調べるときりがありませんが、こんなとこかと思います。
3.価格査定
ここは売主様が一番気になる調査だと思います。そして、不動産業者としての腕の見せ所です。
なぜかというと価格査定のスキルの一つとして市場価格を把握している、「妥当な市場価格を判定する」だからです。
初め、不動産価格ってどうやって出すんだろう?と謎めいた部分を感じていました。おそらくみなさんもどうやって判定しているのか謎めいているかと思われます。
基本的には、価格査定には決まった方法が無いという事です。
業者さんによっては様々な判定の仕方があるかと思いますが、そこはみなさん企業秘密なので容易く教えていただけるものではございません。
これには、不動産業初心者の私には悩みました。しかも査定提出の条件が「根拠が明確な事」です。
「取引事例比較法」「収益還元法」「現価率」様々な計算の方法があります。どれを採用して良いか頭ぐちゃぐちゃです。
それでもここを出さなくては、不動産業として商売になりませんので、様々な方法を模索して出すようにしています。根拠を明確にして提出する事が、これから売りに出す方へ信頼の第一歩だからです。
土地に関しましては、机上の情報で何とかなりますが、建物の場合は机上の計算では算定しきれない部分がございます、築年数が同じでも使用状況や管理のやり方、工法などにより劣化の状況が様々だからです。
私はこの建物の査定に関しましては、建築の知識や経験がございますので、強みであり得意な所と思って査定をおこなっています。
わたくしは、戸建て住宅に関しましては、「価格査定システム」を採用しています。土地に関しましては、事例地比較法なのですが、我が町のように田舎の町では、事例地の公表が少ない事がほとんどですので、固定資産税評価額を参考に算出しています。
しかし、100%正しい数値はございません、正しい数値がわかるのは、取引が成立した時です。
4.媒介契約
この契約は一般的にあまり認知されていないと思われます。いったい何の契約?と思う方もおられるかと思います。
昭和50年代前半までは、「媒介契約」について業者と依頼者との間で書面を取り交わす事は殆ど行なっていなかったようです。
したがって、媒介に関する権利義務関係が不明確で報酬や注意義務をめぐる紛争が少なからずあったようです。
そこで昭和55年の業法の改正により、「依頼者の保護」および「不動産流通市場の整備」を目的に「媒介に関する契約関係の明確化」、「媒介契約内容の書面化」等を図る「媒介契約制度」が創設されたようです。(昭和57年5月施行)
聞くところによると、依頼者と業者の間で依頼していたが、途中で自分で相手を見つけたから業者飛ばしを行って、業者はそれまで手をかけた分の請求ができなかったり、仲介終了後の請求が依頼者が思った以上の請求だったりといった所でトラブルになっていたと想像できます。
協会の指導では、しっかり契約書をとって下さいとの指導ですので、面倒ですが、トラブル防止のためにとるようにしています。しかし、私が今までとった時は依頼者は納得していただいていますので、やはりトラブル防止上必要なんだなと思います。
5.不動産広告
これに関しましては、建築業を営んでいた時よりも頻繁で重要な業務となりました。
建築業での広告といえば、展示会のチラシの案内が一番大きな広告でしたが、いかに広告費をかけないで営業するかみたいな感じでした。
すでに建設中の物件が広告の代わりを果たしていたんだと今になって気がつきました。
不動産媒介の広告媒体には①新聞折り込みチラシ、②新聞・雑誌、③インターネット主です。
今はスマートフォンの普及でインターネットにて物件を探している人も多くなってきたと思いますので、私はインターネット広告に力を入れています。
しかし、年齢層によっては紙媒体からみつける層もありますので、いろんな方面でためす必要があります。
しかもこの不動産広告は「宅地建物取引業法」や「不当景品類及び不当表示防止法」「不動産の表示に関する厚生競争規約」などでがちがちの規制がかかっています。
したがって、不動産の広告はどこの不動産業者の物でも似たような表示になっているのはそのためです。
表示すべき事項と表示をしてはいけない事項があります。
有名なのは「最寄り駅より徒歩○分」といった表示をよく見かけるとおもいますが、この徒歩○分も決まりがあるのご存知でしたか?
正解は道路距離80m=1分(端数切り上げ)の表示が決まりです。
他にも、大げさな表示「特選!」とか「二度と出ない!掘り出し物物件」なんて表示もNGです。
なかなか規制がありますので、どの広告も決まり切った内容になりがちですが、私も売主さんの事を思うと、どうにか物件を良く表現できないか試行錯誤しています。
6.現地案内
ここは、紙面情報ではわかりにくい部分を確認するには、大切な項目です。
新築ではまずできない事です、新築の場合は図面か模型を作製するか、3D CADで確認するしかありません。
中古物件の場合は現物が視認できるメリットです。ただし、小屋裏や床下の状況や、家が水平に建っているかなどは見つけにくい部分ですので、ホームインスペクションの利用をおすすめいたします。
また、大切なのは境界確認ですが、境界杭が抜けている事が多々ありますので、その辺は不動産業者がしっかり確認をする大切な調査でもあります。
越境物が無いか、隣の屋根の落雪が無いかなど、一般の方同士の取引では発見しづらい所でしょう、不動産のプロとしては見抜くのが大切です。
7. 資金計画
不動産は高額になるため、資金計画が必要です。田舎の安い土地を購入するのであれば、割と現金で購入される方が多いようです。
建物もとなると、現金ではほぼ不可能なので、住宅ローンはかかせません。
不動産業を行ってからはローンの相談を受ける事は少なく感じました。注文住宅を扱っていた時頻繁に関係していましたが。
そういう事で、新築を検討の方は建築会社が相談にのっていますので、土地のみの取引ではあまり関わっていません。
相談されれば、いつでも関われる準備はしています。
8. 条件交渉
ここは、不動産業者としての醍醐味ではないでしょうか?
売主さんの希望価格に対して、買主さんの意向をすり合わせる、大切な業務です。
それにしても、業務報酬規定上(売買価格の○%)という中で、やはり安く交渉するという方向に向きずらいかと思います。
この報酬規定がある限り、買主に即した交渉とはなりにくいと感じています。
それでも、買う側も不合理な条件をつきだしてくる場合がありますので、その辺をうまくすり合わせるのも大切な業務となります。
この辺は依然建築業がわとしてみれば、買う側条件を突き出せば済んだ所ですが、売主さんの事情というのが見えてきました。
9. 重要事項説明
この業務は宅地建物取引業及び宅地建物取引士にとって独占業務です。
業法上の規定
業者にたいして、自ら不動産の売買を行ったり、その代理・媒介を行う場合には①取引が成立するまでの間に②購入者等に対し、③取引主任者をして④取引士証を提示させたうえで⑤重要事項を記載した書面を交付して説明させなければならないと定めています(業法第35条)
つまり、不動産を取得する方に対し「こんな大切な事知っていたら、買わなかったのに!」といった事を事前に防止するのがねらいです。
ちなみに、一般の方が取引される場合はこれが無いため、購入者は購入後に不利益を被ったり、売った方は後に瑕疵責任を追及されたりして不利益を被るリスクがある事となります。
具体的に考えられる事例は、越境問題等で「購入の土地の塀だと思って購入すると実は隣の塀だった」とか「車庫が越境して建てられていた」とか極端な例は「住宅が越境したまんまだった」といった事が考えられます。
また、引き渡しをしようと思ったら、以前の銀行の担保(抵当権)が設定されていたままで、はずすのに時間がかかったとかがあげられるでしょう。
説明すべき重要事項について
Ⅰ.対象となる宅地又は建物に直接関係する事項・・・14項目
Ⅱ.取引条件に関する事項・・・9項目
Ⅲ.その他の事項・・・2項目
不動産を取得して不利益を被らないために、これだけの項目を事前に調査し説明する義務があります。ここにたどり着くまで結構な時間を要しますが、これも、安心して取引を行う上で大切な業務です。
→続き
10. 売買契約
この項目は取引される方が一番目につく項目でしょう。
この書類と重要事項説明を交わす為に今まで地道な調査を行ってくるわけです。
売買契約書には主に
1.売買の目的物の表示
2.売買代金、手付金の額および支払日
3.所有権移転・引き渡し・登記手続きの日、公租公課分担の起算日、手付解除の期限日、違約金額
4.融資利用の金額や融資未承認の契約解除期限 についての記載があります。
それらの記載について、売主、買主両者の決めごとを具体的に決めなくてはいけません。
・手付、中間金をどうするか
・代金支払い日、所有権移転の日、引き渡しの日をいつにするか
・違約金をどうするか ・土地の測量はどうするか(公募売買とするか実測清算をするか)
・古い建物がある場合、建物を売買対象に含めるか、土地だけの売買とするのか
・賃貸中の物件である場合、買主は賃借権の負担付きで購入するのか、それとも賃借権を消滅させたうえで空室にして引き渡すのか
・ローン特約とどうするか
・その他、売買契約の効力を発生させたり、契約の効力を消滅させるためのなんらかの条件を付ける必要はないか
・瑕疵担保保険責任をどうするか
・その他、売主において売買契約に付随して義務を負担させるか
といった事を決めなくてはなりません。
私は初歩的な事ですが、書類に印鑑の押し方に迷いました。A4用紙数ページにわたっていますので、割印をどうするか、訂正印をどうするかがこういった正式書類でどうするかわかりませんでした。(訂正印は捨印の下に、○地訂正、○地加筆と処理する)など、すべてはそこからのスタートでした。